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  4. 2016.1.12
 
参院選対策てんこ盛り 16予算案を斬る


 昨年末、政府は2016年度予算案を閣議決定し、今月末に国会提出する。15年度補正予算案は4日に提出した。一般会計の歳出総額は15年度当初予算に比べて0・4%多い96兆7218億円と、4年連続で過去最高を更新。今夏の参議院選挙対策がてんこ盛りだ。主な内訳は社会保障費が1・4%増の32兆円、地方交付税交付金が1・6%減の15・3兆円、公共事業費が微増のほぼ6兆円、防衛費という名の軍事費が1・5%増の5・1兆円、国債費(借金返済)が0・7%増の23・6兆円だ。前提となる名目経済成長率は3・1%、実質は1・7%、物価上昇率は1・2%を見込む。


 見えみえのバラマキ予算案


 社会保障費では15年度補正予算ですでに低所得の年金受給者1100万人に3万円を配る措置が取られ、加えて今回当初予算では低所得の障害・遺族年金の受給者150万人にも3万円を支給する。年金受給者の約3割が対象となる。17年度に予定される消費税引き上げに伴う措置を1年前倒しで実施する。
 また2人以上の子どもがいる低所得者世帯への支援として、第2子は保育料を半額に、第3子以降は無料にする(29万人程度が対象になる)。低所得のひとり親世帯に給付される児童扶養手当は、第1子分は据え置き、第2子以降の加算額を増額するが、ひとり親世帯の過半を占める子ども1人世帯には恩恵が及ばないことは疑問だ。それでも一歩前進ではあるが、参院選対策が見えみえなのがさもしい。また14〜15年度に実施した児童手当への上乗せは廃止される。この程度の措置では「出生率1・8」は実現しない。
 聖域の軍事費・公共事業費米軍再編経費を含めた軍事費は4年連続の増で初めて5兆円を突破した。予算計上額はイージス艦1隻で1734億円、哨戒ヘリコプター17機で1026億円、新空中給油機は1機で231億円など。米軍への「思いやり予算」も別途21億円増の1920億円と7年ぶりの水準となる。しかも向こう5年間の保証付きだ。原発や高速鉄道などを含むインフラ受注、武器輸出などの見返り期待を込めたODA (政府開発援助)も17年ぶりの増額で5519億円にする。
 公共事業費は4年連続増だが、実は15年度補正予算にも5800億円が計上されている。好景気を自負するアベノミクスのもとで、公共事業費に切り込まないのも選挙対策である。「農業農村整備事業」や整備新幹線建設費が増やされる。また震災からの復興予算は「福島再生を重点」に絞り込まれ、17%もの減。被災地間の対立を煽るかのようだ。
 年末まで与党内のいざこざを見せつけた17年度消費税引上げ対策の「軽減税率」対策にも着手する。公明党の票を安倍官邸は国家予算で買収したと言える。またTPP対策を名目として農林水産業には2・3兆円を注ぎ込む。


 成長頼みの「雨乞い」歳入計画


 一方、歳入面では税収は15年度当初予算に比べて5・6%多い57・6兆円、税外収入が5・4%減の4・7兆円、新規国債発行(借金)が6・6%減の34・4兆円。国債発行減の一因には、国債の利払い費に影響する長期金利見通しの引き下げがある。13〜15年度の年1・8%から年1・6%に改めたことにより、利払い費は2千億円程度縮小する。日銀の財政ファイナンスがここでも功を奏した。それでも国債の元利払いは1614億円増えて23・6兆円。想定金利を下げても、政府・地方の借金残高は16年度末で1062兆円と、1年で21兆円膨らむ。
 甘利明経済再生担当大臣は「財政緊縮でそれ以上に税収が減っては元も子もない」とギリシャの例を持ち出すが、そもそも20年度まで名目成長率の年平均3%が保てるという政府の前提を信じる民間エコノミストはほぼ皆無だ。国債依存度は下がったとはいえ35・6%、仮に3%成長を続けても20年度でなお国と地方の基礎収支の赤字は6・2兆円残る。「ゼロにする」という国際公約は達成されないが安倍内閣にはその気はないようだ。
 

 内部留保に寄与する法人税減税


 16年度からは法人実効税率を29・97%と現在の32・11%から引き下げる。赤字企業も支払う外形標準課税の増税をしてまで黒字企業の内部留保を増やそうというのだ。そもそも日本の大企業が海外直接投資で儲けることに熱中している中で、法人税減税による国内投資増は望めない。彼らは法人税の安い国を求めて資本を投じているわけではない。

 「米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は15年9月に日本国債の格付けを1段階引き下げ「シングルAプラス」にした。「トリプルA」の英独どころか中国や韓国よりも低い格付けだ。経済規模の2倍の借金を減らす道筋をつけられない日本の財政への評価は厳しい。
 税収増頼みで歳出改革を先送りできる余裕はない」とは日本経済新聞のご宣託だ。だからといって女性や高齢者向けの税制や社会保障の改悪をあおったり、働き方などの「岩盤」規制緩和を急がせたりというマスコミの論調には注意が必要だ。(野崎佳伸)



 
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