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マイナス金利!?
アベノミクス断末魔


 安倍政権のためなら何でもやる黒田日銀が1月29日の金融政策決定会合でマイナス金利の導入を決めた。官邸サイドは「政策の進化」と自賛するが、そうは問屋が卸さない世論は「事実上の債務不履行、徴税だ」「詐欺だ」と警鐘する。証券・為替市場は2月16日のマイナス金利導入を待たずに乱高下、5日後には元のさやに納まった。経済運営の司令塔、甘利明前経済再生相が失脚し、手詰まりとなったアベノミクスを立て直し、何とか参院選までもたせようという姑息な決定だ。


 新政策の正式名称は「マイナス金利付き量的・質的金融政策」。今後は量・質・金利3つの緩和手段を使うことになる。「量」とはマネタリーベース(市中に流通している現金と銀行が日銀に預ける当座預金の総量)を年間80兆円増やして市場の調節を行うこと。15年末で350兆円に積み上がっている。「質」とは長期国債をはじめ上場信託投信(ETF、不動産投資信託(REIT)、コマーシャルペーパー(CPI)といったリスクの高い資産を買い入れること。
 国債は年間80兆円規模で民間銀行から買い入れる。これまでに買い入れ額を漸次拡大し、日銀が保有する国債は発行残高の3割、330兆円に積み上がっている。
 量と質の2つの次元は前任の白川日銀が採用した政策。違うのはその規模が常識を超えて拡大されたことだ。ちなみにこの四半世紀に及ぶ日銀の金融緩和はゼロ金利(1999年)、当座預金を拡大する量的緩和(01年)、質と量の包括緩和(10年)と変遷。今回の決定で第3の次元=マイナス金利が加わり金融緩和が文字通り異次元に突入した。


 当座預金に適用


 マイナス金利は当座預金に適用される。2月現在、残高約253兆円の当座預金を今まで通りの0・1%の金利を適用する「プラス金利」と新たな預金部分を「ゼロ金利」と0・1%マイナスの「マイナス金利」に3つに分ける。
 マイナス金利により、預金する銀行が逆に金利を支払うことになる。日銀の試算では当座預金260兆円のうちマイナス金利の対象は20〜30兆円、プラス金利は210兆円、ゼロ金利は40兆円。マイナス金利で銀行の損失は、年間200億円に上る。この「奇策」を輸出大企業と民間金融機関が主導する経団連は、「結果的には賃金や設備投資に効いてくる」と前向きだ。
 マイナス金利の目的は、アベノミクス第一の矢の「2%の物価安定(インフレ)」を早期実現すること。黒田東彦総裁は「景気は緩やかに回復している」との判断を前提に、2%の達成時期を17年度前半に先延ばしした。
 これで「15年度の後半にかけて」→「16年度前半頃」→「16年度後半頃」に続く4度目の先延ばし。2013年4月以来の「異次元の金融緩和」の目標実現(国債等金融資産の購入→低金利→需要喚起→企業利益増→雇用・賃金上昇→生産増・消費拡大による好循環)の行き詰まりを事実上認めた。


 黒田総裁のリスク認識は、原油安や中国等新興国の経済が先行き不透明となり、「企業心理や人々のデフレ心理の改善が遅れ、物価の基調に悪影響がある」というもの。要するに2%の物価目標が実現できないのは、企業・労働者・消費者の心理がインフレ期待に切り替わっていないためだというのだ。


 失敗に懲りずに


 黒田総裁がマイナス金利に込める期待は、長期・短期の金利の低下→銀行の貸出金利の低下→企業の設備投資と人々の住宅購入の刺激。同時に、株式市場の活性化→株価の上昇・円安→投資と消費を刺激→景気の好循環実現。リフレ派によるアベノミクスの筋書きはそのまま変わっていない。この3年間の「大胆な金融緩和」の失敗に懲りず、「アホノミクス」(浜矩子氏)の上塗りだ。
 たしかに大胆な金融緩和で円安になりトヨタなど輸出大企業の収益は過去最高となった。株価も15年ぶりに2万円台を回復した。しかし、15年度の物価上昇率は2%には遠く及ばない0・1%。実質GDPは目標2%に対して1・1%、16年度の見通しは1・5%。円安で輸入原材料が高騰し、中小企業の経営は圧迫され、庶民は食料品等の物価上昇に見舞われた。
 しかも、実質賃金のマイナスは4年連続、世帯の消費支出は4・4%減少(15年12月、前年同期比)とこれも4年連続の減少。当たり前だ。非正規労働者が2038万人と雇用者総数の4割を占めるに至ったからだ。


 独占企業を潤す


 黒田総裁は1月21日の参院決算委員会でマイナス金利は「具体的に考えていない」と答弁したが、その8日後の導入決定だった。「中国ショック・米の利上げ・原油安」の煽りで年末(12月30日)の日経平均株価1万9033円71銭が1月21日には1万6017円26銭に3000円以上も下落、円は1ドル=120円42銭が116円75銭に上昇した。 
 円安株高がアベノミクスの生命線であり、その破たんは安倍政治の命取りになる恐れが現実となった。追い打ちをかけるように、マイナス金利導入発表5日後の2月5日、株価は698円71銭下落、為替は3円81銭の円高になった。長期金利は発表前0・220%が一気に0・020%に低下した。マイナス金利は早くも市場の反逆を受けている。
 大胆な金融緩和それ自体が国内の実体経済(その実需を支える柱が企業の設備投資と賃金)が回復しない中、効果薄だった。その上にマイナス金利の導入だ。早くも銀行は貸し出しにガードを固め、定期預金金利の引き下げ、ATM手数料の引き上げなど安易な損失補填策に転じた。
 円安株高を誘導するアベノミクスは、円安で輸出大企業を潤し、株高で大株主の銀行・証券・投資ファンドに奉仕する。この利潤・株価市場主義の下、年金基金も運用する国債は投機の対象だ。金利が上昇し暴落したとき、庶民の税金が注入される。冗談じゃない。


 
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