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2012.1.24
JR西前社長判決
「無罪」が示した司法の限界 

判決は、司法の限界を明らかにした。神戸地裁は、JR宝福知山線脱線事故で業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の前社長を無罪としたのである。裁判では、鉄道などの重大事故で組織の責任者を業務上過失致傷死罪に問えるかどうかが大きな争点だった。

 

 神戸地裁(岡田信裁判長)は1月11日、乗客と運転士107人が死亡し、562人に重軽傷を負わせ、その後自殺者まで出した2005年4月25日のJR福知山線の脱線・転覆事故で、業務上過失致死傷罪(求刑=禁錮3年)に問われたJR西日本の山崎正夫前社長に無罪を言い渡した。


 
事故を予見できたか


 最大の争点は、事故現場の急カーブ化への変更工事完成時に安全対策統括する鉄道本部長だった前社長が、危険性を認識し、事故を予測できたかどうかだった。裁判所は「事故を予見できる可能性はなかった」とし、無罪としたのである。

 判決に対し、被害者の遺族らは「これで無罪なら、今後どんな事故が起きても無罪になる」「会社の責任を問える法体系に変わってほしい」と無念の涙を流し、控訴を訴えた。

 控訴を望むのは、前社長の無罪が確定すれば、公判手続き中の井手正敬元会長らJR西の歴代社長3人の裁判に影響すると思うからだ。3人は、検察審査会の議決を受けて業務上過失致死傷罪で強制起訴されている。

 だが、現行刑法の業務上過失致死傷罪では法人の責任が問えず、大事故などの組織責任を追及する上で刑事裁判の限界が指摘されている。そして、前社長の無罪判決がその限界を示した。ならば、控訴審でも、歴代3社長の裁判でも、遺族が求める事故の全面的な真相究明は困難だろう。


 
根底に分割・民営化


 われわれは、事故当初から根底に政府による国鉄の分割・民営化の強行と規制緩和推進政策、そして運転士を速度超過に追い込んだ過酷な日勤教育があることを指摘してきた。

 JR西は当時、JR東日本やJR東海に比べ経営基盤が弱いのに政府が煽る株式公開による完全民営化を同じようにやろうと焦り、利益優先・安全軽視に大きく傾斜していた。

 速度照査ができる自動列車停止装置(ATS−P型)の設置が、JR東海ではすでに終わり、JR東日本でも幹線では終わっていたのに、JR西では主要幹線でも未設置の路線が多く、事故当時のJR福知山線もそうした路線の一つだった。

 事故が起きた05年、JR西大阪支社は経営方針のトップ項目で「稼ぐ」とうたい、徹底したコスト削減によって安全のための投資は極限まで削った。そのことは今回の地裁判決でも、「カーブでのATSのあり方などに問題があり、大規模事業者として期待される水準に及ばないところがある」と組織としての責任を指摘された。

 だが、事故の重大さを考えると不十分と言わざるをえないし、遺族の思いからかけ離れているだろう。個人の責任を問う現行の刑法で事故原因の究明を望むのが無理ならば、刑法そのものを見直す必要がありはしないか。

 また、真相究明と再発防止が真に可能となる制度への抜本的な転換も視野に入れるべきではないだろうか。

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