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2012.2.28
原発災害の補償
集団的な裁判で一定水準を 

 福島原発事故による避難者・被災者への損害賠償は、一向にはかどっていない。2月初めの東電発表によれば、支払いは総額3705億円。8万6500件の請求に対し、合意したのは半数強。企業・団体より個人が遅れており、3万件しか支払われていない。

 わずかな慰謝料だけの「自主避難者」はもとより、避難指示された住民十数万人の多くは実損も賠償されていない。国・東電の基準が低く、請求手続きも煩雑だからだ。月10万円の慰謝料を、半年後から5万円とするなど了解できるはずがない。避難者は追い詰められ、怒っている。
 
 不動産賠償を認める

 そこで原発ADR(紛争解決センター)が浮上している。大熊町の避難民が、国と東電の基準を上回る和解案を昨年末に引き出した。避難区域の自宅の賠償(東電は不動産については賠償に応じていない)と、慰謝料月額50万円を要求し、ADRは基本的に認める和解案を示した。
 しかし東電は、1月26日に拒否した。当人は再度、東電に回答を求めているが、拒否する可能性はある。
 ADRは、2月半ばに従来の国と東電の基準を上回る新たな基準を示した。慰謝料の切下げはせず、不動産の損害や「自主避難者」の避難実費の一部を賠償対象とするなどだ。
 しかし、最低基準としてではなく、画一的な基準として扱われる危険性もある。また、ADRの和解案に東電は従う法的義務はないため、東電は引延ばし作戦を続けるだろう。
 事実、ADRへの申立ては2月半ばで976件に対し、和解成立は8件だけ。しかも住民の苦情に押され、自治体がサラ金対策専門の大手弁護士事務所に依頼し、ADRに数千人規模の申立てを始め、対応が追いつかない。一刻も早い賠償を求める避難者に付け込んで、画一的な低水準解決になりかねない。
 全生活を奪われた被災者は、たとえ数億円もらっても償えない以前の暮らしを、避難で縮めた親戚・友人の命を、子どもの未来を返せと叫びたいだろう。
 ADRにしても良心的な弁護士の力を借りたい。そして何よりも集団的な裁判闘争によって一定の解決水準を引き出し、それをADRの水準にも反映させる方が実効性がある。

 被害者の分断許すな

 一方、東電も「5年以上帰宅困難者には不動産賠償は全損で」と言わざるをえなくなった。「全損」なら億単位もある。だから国も東電も悪知恵を絞る。帰還できない人は賠償するが、「除染」できる地域は値切るのだ。
 だが、朝日新聞の避難住民調査(2月16日付)では、「戻りたい」は11年6月の62%が12年2月には36%に激減。「今後の生計のメド」は45%が全くたっていない。「除染」は「全く効果はない」が33%、「あまり効果はない」が45%。帰りたくても帰れないのだ。
 政府は4月から避難地域を再区分し、50ミリシーベルト以上は別として、他は段階的に帰還「可能」にしていくという。原爆被爆者を国が線引きで切り捨てた姑息さと同じだ。被害者の命と暮らしと健康を破壊し、東電が加害者責任を果たさずヌクヌクと生き延びることを許したら、原発が再び推進される。

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