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2012.3.20
水俣病問題
「7月」撤回し、基準を見直せ 

 公式認定から56年、水俣病は半世紀を過ぎても決着の見通しが立たない。国は特措法で幕引きを図る。一方、裁判所は国の認定基準の不十分さを認める。何よりも多数の被害者が苦しんでいる。曖昧にすれば、原発事故の被曝者の将来の救済にも悪影響を及ぼす。

 

 


 水俣病の症状があっても国の基準で患者とは認められない被害者の救済を巡り、細野豪志環境相は2月3日、水俣病特別措置法に基づく申請受付けを今年7月31日で締め切ると表明した。



 
210万で最終決着



 国・環境省は、水俣病最終解決と銘打った特措法ですべてを終わらせ、加害企業・チッソの「消滅」を急ごうとしているのだ。

 水俣病の救済は、国が77年に示した認定基準が出発点になっている。感覚障害や視野狭さくなど複数の症状を条件とするため、基準を満たさない多数の被害者が行政を相手取ってに次々と提訴した。

  そのため国は95年、約1万人に一時金260万円を支払う最初の政治決着を図った。だが、最高裁が04年、感覚障害だけで一時金を上回る賠償を認めたため認定を求める被害者が増えた。国は09年、特措法を制定し、未認定患者に一時金210万円を支払うことで救済の最終的な決着を図ろうとしている。


 チッソ消滅のために


 特措法は、「可能な限りの救済」と「水俣病の解決」をうたい、申請開始から3年以内をめどに救済対象者を確定させると定める。

 メチル水銀をたれ流して水俣病を起こしたチッソ水俣工場は昨年1月、すでに「JNC(ジャパンニューチッソ)」を設立し、「救済」が終わるのを待ってチッソを解散・消滅させることになる。

 その後は、水俣病の申請と補償要求は向かうべき相手が「不在」という事態になる。細野環境相は、「救済策から取り残される人が出ないように先頭に立つ」と言うが、そのために、国を挙げて「申請」を呼びかけているポーズが必要なのだ。

 昨年末までに、熊本、鹿児島、新潟の3県で「想定を越す」約5万人が救済を申請した。国の患者認定基準より対象とする症状の幅が広がり、これまで声を上げなかった潜在患者が数多く申請したためだ。昨年12月も800人以上が申請し、なお増加が続いている。


 
被害者をなお苦しめ


 
2月27日の水俣病溝口訴訟の福岡高裁判決は、国の認定基準の不十分さと運用の不適切さを認めた。特措法による「救済」で最終決着を図ろうとする国の姿勢を厳しく問い、患者・被害者の立場に真正面から向き合った。

 だが、熊本県は3月8日、判決を不服として上告した。蒲島郁夫知事は上告理由を「認定制度の根幹に関わる判決を受け入れることは難しい」と述べた。判決に「認定制度は否定されていない」と強弁したのは、国と熊本県ではなかったのか。

 行政はこれまでも「認定制度の根幹に関わる」として司法の判断に従わず、患者や原告を苦しめてきた。許されないことだ。

 福岡高裁の判決を踏まえれば、国・環境省は救済の道を閉ざす「7月締切り」の方針を直ちに撤回し、認定基準の見直しなど抜本的な救済へさらなる制度設計を図るべきだ。


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