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2012. 10.02
発達障がい者に厳罰
危険で誤った判決だ


 姉を殺害した40代の発達障がいの男性に大阪地裁の裁判員裁判は7月末、「被告の障がいに対応できる社会の受け皿がなく、再犯の恐れがある」として、求刑を上回る刑を言い渡した。判決から見えてくる問題点を検証する。

 精神障がいのある弟(42歳)が姉(当時46歳)を包丁で刺殺した事件は昨年7月大阪市で起きた。
 判決は、殺人罪の有期刑の上限・懲役20年、求刑は16年だった。被告側は「殺意に至ったのは障がいの影響」と保護観察付きの執行猶予の判決を求めていた。判決は、求刑を4年上回る限度まで重くした理由を、@母親が同居を断ったA被告の精神障がいに対応できる社会の受け皿がないB再犯の恐れがあり、許される限り長い期間刑務所で内省を深めさせることが社会秩序のためになるとする。


 あり得ない再犯


 発達障がいは生まれながらの脳の機能障がいが原因とされ、被告は逮捕後の精神鑑定で初めて広汎性発達障がいの一つ、アスペルガー症候群と診断された。他人とのコミュニケーションがうまく図れず、本人が被害感情を募らせてしまうこともあるという。
 被告は小学5年の時に不登校になり、約30年間引きこもり生活をしていた。不登校になった時、転校や引越しをしてやり直したいと両親に訴えたが実現しなかった。それを姉のせいと思い込むなど、姉への恨みの感情を30年間も募らせた上での犯行だった。
 母親と2人暮らしをしていた被告に、結婚して家を出ていた姉が自立を促したことが犯行の引き金になったという。被告の弁護士は、「家族への甘えが入り混じった複雑な恨みの感情を募らせた上での犯行で、あかの他人への再犯はありえない」と説明する。
 判決は、発達障がいの特徴的な考え方や行動様式、発達障害支援法による「受け皿」が整備されつつあること、現在の刑務所では発達障がい者も一般受刑者も同じ扱いで、障がいが改善されるどころか、悪化するだけといった根本的な点を見落としている。
 また、犯罪行為を罰する刑法の原則を逸脱し、再犯の恐れがあると隔離することは障がい者差別であり、「保安処分」になる。維新の会・大阪市議団は、「発達障がいは愛情不足が原因」との偏見に基づく誤った条例案を出そうとした。


 煽られた裁判員


 「触法障がい者はとにかく隔離」とする判決の背景には厳罰化の流れがある。凶悪犯罪の発生件数は減少傾向なのに、治安当局やメディアは「体感治安の悪化」と危機意識を煽り、厳罰化が進む。
 裁判員制度は、市民の常識や感覚を刑事裁判に反映させると導入されたが、市民感情を入れると、厳罰化が助長されると指摘されてきた。治安悪化の危機感に煽られた裁判員が、今回の不当な判決を生んだということも指摘しておかなくてはならない。


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