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2013.04.16
生活保護監視¥例
生存権とは、問われる25条


 

 生活保護費などを受給者が遊興に浪費することを防ぎ、見つけた市民に通報を求める兵庫県小野市の「福祉給付制度適正化条例」が3月27日、賛成多数によって市議会で可決・成立した。全国から賛否約2000件の意見が寄せられた。


 条例は、受給者の責務として生活の維持・向上に努めるためパチンコ、競輪、競馬、賭博など浪費防止を目的とする。市民の責務として、不正受給を疑われたり、パチンコ、競輪、競馬、賭博等への浪費で日常生活に支障がある受給者について市に情報を提供するとした。
 元警察官などを想定した「適正化推進員」は情報提供を受けて調査、市がその受給者を厳正に指導する。市民の通報を義務化した条例は全国に例がなく、4月1日に施行された。寄せられた意見の6割は「税金でギャンブルは許されない」「生活費の散財を禁じるのは当たり前」と賛成する。


 憲法違反の疑い


 意見の4割は「人権侵害、監視社会につながる」「受給者への差別や偏見を助長する」と反対する。兵庫県士弁護会は、いち早く「憲法違反の疑いがある」と条例案の撤回と廃案を求める声明を出した。権力の暴走を抑制し、国民の権利を保障する立憲主義の理念からも、同声明を全面的に支持する。
 生活保護は憲法が保障する生存権に基づく権利だ。福祉制度で支給される金銭は貧者への恩恵ではなく、すべての人が自立して人間らしい生活を営むための社会的再配分であり、その使途は受給者自らが自律的に決めるべきものである。
 だが、生活保護の受給者には、スティグマ(恥辱・負の烙印)を感じる風潮が根強くある。小野市内に住む70歳の女性受給者は、「真面目に暮らしていても条例で騒がれるたびに肩身が狭い」と受け止めている。同条例は、受給者を萎縮させるとともに生活保護の申請をしづらくさせ、制度の根幹を揺るがすものだ。
 受給者の浪費を見つけた市民に市への情報提供の義務を負わせることについては、「監視社会につながる」という意見は多い。蓬莱務・小野市長は「監視ではなく、地域の絆を深めるための見守り」と強弁する。市民には、「受給者が誰なのか分らないので通報のしようがない」という声もある。


 行政の責任放棄


 生活保護受給者への指導・指示は、福祉事務所の権限と責任で行うべきで、専門的知見のない市民に監視を委ねることは行政の責任放棄と言わざるをえない。元警察官の推進員でなく、ケースワーカーの拡充が必要だ。
 週40時間働いても人間らしく生活できないワーキングプアが、1000万人を超えている。安倍政権は、3年間で生活保護給付水準を1割弱引下げる方針だ。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」とは何か。国民の生存権を保障する責務を定めた憲法25条が問われている。


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