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2014.05.13
「水俣病」問題(中)
元凶の国は新たな切捨て策



 水俣病問題の解決を妨げている最大の元凶が、国・環境省であることは明らかだ。もちろん、被害者全員が認定されたとしても、メチル水銀中毒による障害や患者の苦しみがなくなることはない。しかし、国は認定すら拒み続けている。


 覆された認定基準


 最高裁は昨年4月17日、「症状の組み合わせがない場合でも、個別具体的な判断で水俣病と認定できる余地がある」とする判決を出した。判決は、熊本県に認定申請を棄却された感覚障害の溝口チエさんとFさん(ともに故人)を水俣病と認めたのだ。 最高裁判決は、感覚障害に加えて視野狭さくなど他の症状との組み合わせを求めてきた国の「77年認定基準」を根本から否定し、覆した。
 さらに昨年10月には国の第三者機関である公害健康被害補償不服審査会(不服審)が、同じように熊本県に認定申請を棄却された感覚障害のみの下田義雄さんについて、「認定相当」とする逆転の裁決を出した。
 下田さんは、3月31日に熊本地裁で判決があった水俣病第二世代訴訟の原告だったが、採決を受けて訴えを取り下げている。司法と行政機関が示した結論は、熊本県の棄却判断を否定し、国・環境省が金科玉条としてきた認定基準を根本から覆したのである。


 客観的証拠を出せ


 環境省は、最高裁判決や不服審裁決を受けて今年3月7日、認定申請者がメチル水銀摂取との因果関係を客観的な資料で証明できれば、感覚障害だけでも水俣病と認定できるとする新たな認定の運用指針を熊本、鹿児島、新潟の3県と新潟市に通知した。
 新指針は、77年基準自体を変更するものではない。新指針の内容は、感覚障害だけで水俣病であるかどうか判断する場合は、原因物質であるメチル水銀に汚染された魚介類を多食した時期や食生活の内容、魚介類の入手方法を確認する。
 その上で、@メチル水銀の体内濃度 水俣病の発生地域での居住歴A家族歴B職業歴を検討し、メチル水銀にどの程度汚染されているかを確認するとし、さらに、これらについて「できるだけ客観的資料による裏付けが必要」としている。


 被害者に責任転嫁


 新指針は、現に水俣病で苦しんでいる被害者に、「水俣病になった証拠を出せば認定してやる」というものだ。子どもの頃に、どれだけメチル水銀に汚染された魚介類を食べたか証明せよというのである。そんなことができる人は、ほとんどいないだろう。
 その理由を第二世代訴訟原告弁護団の山口紀洋弁護士は、「国は、食品衛生法で調べなければならなかったのにやらならなかった。魚の汚染状況が分からないというのは、いつにかかって国の責任」と指摘する。
 自らの責任を棚に上げて国が出した新通知は、新たな患者の切捨て策であることは明らかであり、絶対に許されない。

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