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2014.09.09
 取調べの可視化
 冤罪防ぐ制度へ再び議論を



 冤罪事件をなくす制度の確立が課題だった。ところが、法制審特別部会の「結論」は、可視化の対象を裁判員裁判対象事件などに限定する一方、盗聴の拡大や司法取引の導入など捜査機関の権限拡大・強化だ。国民的な議論が求められる。


 取調べの可視化(録音・録画)を議論してきた法相の諮問機関である法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」が7月9日に了承した「要綱案」は、このままいけば今月から審議会で検討されて正式決定→法案化→来年の通常国会に提出という運びになるという。


 冤罪が起きても!?


 だが、可視化の対象は裁判員裁判の対象とされる「重大事件」や検察の独自捜査事件で、全体のわずか3%にも満たない。それ以外の事件では、これまでのように「冤罪が起きても構わない」とでもいうような要綱案には、失望を通り過ぎて怒りを覚える。
 可視化の議論は、そもそも冤罪事件への猛省だった。鹿児島県議選を巡る選挙違反事件で07年に無罪となった志布志事件、さらに連続婦女暴行冤罪事件の氷見事件、いずれも殺人事件で冤罪が明らかになった足利事件や布川事件、最近では袴田事件の冤罪がある。
 そして、可視化の議論の決定的な発端となったのは、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の村木厚子さん(現事務次官)を大阪地検特捜部が09年に文書偽造事件で逮捕した冤罪事件だった。
 取調べで村木さんの関与を“自白”した部下らが法廷で「供述調書は検事の作文」と次々に証言した末に10年9月10日、村木さんに無罪判決、検察は控訴権を放棄し、無罪が確定した。その直後に捜査側の主任検事による証拠改ざんが発覚し、検事総長は引責辞任した。
 これを受けて設けられた法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」の議論を引き継ぐ形で法制審特別部会が設置され、法曹三者や学者ら26人の委員を中心に30回の議論が重ねられ、要綱案の決定となった。


 根幹の崩壊すら


 部会には、村木さんをはじめ氷見事件を告発する映画『それでもボクはやってない』を作った映画監督の周防正行さんらも加わり、全面的な可視化を強く主張した。しかし、可視化を巡る委員の溝は埋まらず、法制化後の拡大に期待する文言を「今後の課題」に付記することで議論を収束させる形となった。
 要綱案では、妥協の産物となった可視化についても録音・録画すれば容疑者が十分に供述できないと検察官が判断した場合など例外も幅広く認めた。検察官の裁量によって例外が例外でなくなれば、可視化の根幹は崩壊する。さらには今後の課題として、会話の盗聴や被告の黙秘権の制限など見過すことのできない内容も盛り込まれた。


  この「要綱案」の内容での法制化を許してはならない。

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