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  憲法ウオッチ 78     政治不信の向かうところ
                                         
『週刊新社会』 2012年4月10日号

「読売」の憲法世論調査(2月実施)では、改憲賛成派が54%となった(反対は30%)。賛否が40%前後で拮抗していた10年と11年の調査と比べると、かなりの増えようだ。

 注意すべきはその内容だ。2004年には改憲賛成が65%に達したが、これは主にPKOやイラク派兵などの国債貢献論が原因だった。イラクの泥沼化や安倍内閣退陣で国際貢献型改憲論が下火になっていたのが、別の内容で再燃している。「読売」は「東日本大震災、原発事故という国難に直面しても、政治は停滞」している現状を「二院制のあり方」など「憲法改正を伴う制度の見直しが必要だ」という意識の反映だとしている。

事実、「一院制」を求める意見は、昨年9月の前回調査では26%だったのが、今回は37%に増えた。「読売」が3月半ばに近畿圏でおこなった世論調査では、衆院ブロック比例で維新に投票というのが24%(自民18%、民主10%)。維新は「首相公選制導入」と「参院廃止」をかかげている。国会のもたつきへの怒りが、「一院制」と「橋下待望」で重なり合う。自民党の第二次「新憲法草案」で、震災にかこつけた「非常事態条項」が新設されたこともあり、統治機構の権力集中のための改憲論が勢いを増しているのだ。

「読売」調査でもう一つ注目すべきは「無党派層」の改憲賛成が前回40%から55%へと伸び、自民党支持層の53%をも上回ったこと。「一院制」賛成も、無党派層では前回25%から41%へと急伸した。二大政党不信は護憲派に向かうのでなく改憲論に向っている。



  憲法&原発
    
ストップ審査会  96条〝改正〟許さない
                                         
『週刊新社会』 2011年12月13日号

集会は平和憲法を大切にしようとすべての人々に呼びか
けた=11月25日、東京都内で
 憲法改正(壊憲)手続き法が制定されてから4年半がたち、野田政権の下で憲法審査会が満を持して動き出した。

 10月20日開会の臨時国会で衆参両院の審査会委員(衆院50人、参院45人)を選出、衆院審査会(大畠章宏会長=民主)は11月17日、参院審査会(小坂憲次会長=自民)は同28日に初会合をもった。

 「平和憲法は今、かつてない危機にさらされている」。こうした危機感をもって、「原発撤廃・ストップ憲法審査会!憲法96条改正を許さない集会」が11月25日、東京都内で開かれた。

 憲法第96条は、改正の手続きを定めた条項で、衆参各議院総議員の3分の2以上の賛成と国民投票で過半数の賛成が必要としている。

 自主憲法制定を掲げ、とくに第9条改悪の機会をうかがってきた自民党など改憲勢力は改憲発議要件を緩和し、いつでも国民投票ができるように、入り口として96条改悪を狙い、審査会を始動させた。

 大震災・原発震災による「未曾有の国難」を口実とした改憲の動きだ。
 集会は、原発撤廃と壊憲策動を抱き合わせてプログラム。福島・南相馬から南会津へ、現在は会津若松市に避難している国分富夫さんの訴えと福島第一原発4号機の設計に携わった田中三彦さんの映像に見る事故の実相解説が関心を呼んだ。

 集会呼びかけ人の内田雅敏弁護士は、「憲法のヘソは幸福追求権を定めた第13条だ」と述べ、足枷となっている日米安保体制からの脱却を訴えた。

 元国鉄共闘会議議長の二瓶久勝さんは、原発労働に言及し、「命と健康を第一」とする労働組合の復権を呼びかけ、「国鉄闘争を継承する会」への協力を訴えた。

 元読売新聞記者でジャーナリストの山口正紀さんは、消費税増税・TPP参加・スーダンPKO派兵・原発輸出など反動政策を一気に進める野田政権を「壊憲政権」と位置づけ、今は96条改悪を許さない闘いが重要だと提起した。

 国民投票法に反対する同集会は、今回は2006年以来8回目。約300人が参加した。

  憲法ウオッチ 77     始動した憲法審査会
                                         
『週刊新社会』 2011年12月13日号

 参院憲法審査会は11月28日に初めて審議を開始した。衆院は同17日に開始したから、07年に設置されて以来開店休業状態だった両院の審査会が、これで実質的に動き出した。

 衆院の審査会では、自民党などが積極的だっただけで、議論を前に進める空気はうすかった。震災復興や原発事故で、それどころでないというわけだ。

 これに反し、参院は民主党も極めて意欲的だ。江田五月氏が「自衛力や国際貢献の規定がない」と述べ、参院での党派を超えた議論の必要性を力説した。自民党の川口順子氏は「震災復興の今こそ国のかたちの議論が必要だ」と述べ、増子輝彦氏(民主)も「震災が憲法論議の障害にはならない」と応じた。

 衆院はいつ改選されるかもわからず、また当面の政局に左右される。落ち着いて「超党派的」議論ができる参院で、改憲論議を先行させようという。

 また震災・原発事故を逆手にとって、統治機構の根本的な改悪に着手する「ショック・ドクトリン」(ナオミ・クライン)方式も垣間見える。

  憲法審査会  委員選任を強行
    
民主、憲法を国対の道具に  許されない暴挙
                                         
『週刊新社会』 2011年11月1日号

 第179臨時国会は10月20日、12月9日までの51日間の会期で開会した。

 今国会は、東日本大震災の復旧・復興に向けた第三次補正予算案と増税法案をはじめTPP (環太平洋連携協定)、税と社会保障の一体「改革」、選挙制度、沖縄の米軍普天間基地移設問題などが大きな争点となる。

 今年度第三次補正予算案と増税関連法案は28日に国会提出され、同日の野田佳彦の所信表明演説と安住淳財務相の財政演説を受けて各党の代表質問、11月7日以降に衆参の予算委員会で審議が始まる見通し。

 政府・与党は11月中旬〝ねじれ国会〟のなか、民主党は自民・公明両党の協力を得るため、憲法審査会の委員選任に応じた。

 審査会委員の選任について民主党は、自公が憲法改定のための国民投票法を07年5月に強行採決で成立させたことから拒否してきたが、国会対策のため自公の要求に屈して選任に応じたものだ。

 衆参両院は20日の本会議で社民党や共産党の反対を押し切って、改憲原案を審議する憲法審査会委員の選任を強行した。

 委員選任について、共産党は「反対だが、審議には参加する」と衆参各1人の委員を出したが、社民党は、「いずれ委員を出すことになるにしても、国会対策のために憲法審査会を動かす環境づくりをすることは許せない」と抗議、委員を出すことを拒否した。

 憲法審査会は、改憲のための国民投票法が07年5月に強行採決で成立した後、08年6月、委員を50人などとする衆院憲法審査会規定が成立。10年5月に国民投票法施行。今年5月に、委員45人などとする参院憲法審査会規定が制定された。

  憲法ウオッチ 76     改憲翼賛の準備着々
                                         
『週刊新社会』 2011年5月31日号

 参院で憲法審査会規定が制定され、衆院と合わせ「改憲原案」を審議する制度はできた。しかし両院とも、各党から出す審査会の委員も決まっていない。マスメディアは大震災と原発事故対応で憲法論議自体は当面手がつかないと報じている。

 確かに始動するには、政界再編・大連立という政治の流動が落ち着かねばならない。しかし地ならしは進行中だ。新憲法制定議員同盟による「非常事態条項」新設のキャンペーンだけではない。

 「災害復興」論議でも、「新しい国のかたち」として「道州制」が喧伝されている。災害にたいし「国会は役にたたない」という論調は巧妙に「議員定数削減」や「参院廃止」論へと誘導されている。

 またこれらが「一院制国会実現議員連盟」、「道州制懇話会」、「復興議連」、「国難対処、民主・自民中堅若手議員連」など民・自中心の超党派議連を舞台に発信されていることだ。

 民主・自民中心の「改憲発議要件」の緩和を目指す議員連盟も発足する。5月10日に設置された民主党憲法調査会は、タカ派改憲論者・前原誠司前外相を会長にした。どういう「政界再編」があろうと、改憲派が圧倒する状態が着実に準備されている。

 5月16日に発表された「毎日」、「朝日」各紙の政党支持率調査は、ともに社民0、共産2という最低を記録した。

 いまのところ「二大政党」は原発事故の責任の押しつけあいに躍起だが、事故の進行はさらに踏み込んだ「翼賛体制」に踏み切らせるだろう。

 脱原発の声が政治の場に強力に押し上げられない限り、「新憲法」制定論議はそう遠くない将来浮上しかねない。

  憲法ウオッチ 75     火事場泥棒の改憲論
                                         
『週刊新社会』 2011年5月17日号

 火事場泥棒のように、大震災と原発事故を奇禍として改憲論が頭をもたげている。

 4月28日に、民主党の鳩山元代表など超党派議員が出席して新憲法制定議員同盟の大会が「大規模自然災害にも即応できる憲法をつくろう」をスローガンに開かれた。

 そして今次災害で、憲法に「非常事態条項」がないなど「憲法の欠陥が明らかになった」とし、復興に向け「新しい憲法の理念に基づいて、新しい国づくりが進められる必要がある」と決議した。

 「基本的人権」を制限して、首相をはじめとする国家に権限を集中することと、巨大災害からの復興= 「新しい国づくり」の必要が公言されだしたのだ。

 4月28日に発表された民主党の「復興ビジョン」でも、「新しい国のかたち」として「道州制を視野」にと述べている。憲法第8章「地方自治」も書き換えるくらいの大規模な改編をしようというわけだ。

 「復興計画」をめぐって国・県と町村・被災住民の意向がくいちがっている。22条や29条などの権利を制限しないと、「計画」が進まない。

 為政者たちは、災害直下の権力発動だけでなく、復興期間も「非常事態条項」の必要性を感じるだろう。国会機能強化のために「2院制は弊害」との議論も浮上するだろう。

 いずれにせよ、25条を保障する条件がいかに不十分であったかをすこしも反省することのない暴論である。

 事態は動いている。4月28日の「一院制国会実現議員連盟」(民主・自民・公明など)総会は、衆参両院の「審査会規定」の整備、憲法審査会早期開催を決議した。

 5月1日の参院議事運営委員会理事懇談会では、憲法審査会「規定」の早期制定のために、連休明けから具体的な協議に入ることを確認し、5月2日の参院議事運営委員会理事会に、民主党は「規定案」を提示した。

 また近く、民主・自民中心の「改憲発議要件」の緩和を目指す議員連盟が発足する。新聞報道によれば自民100人以上、民主30人以上が参加の見通しという。

  憲法ウオッチ 74     蠢動する改憲の慣らし運転
                                         
『週刊新社会』 2011年1月11日号

 去年の話で恐縮だが、あまり報道されないが気になる動きがあった。自民党が昨年の通常国会に「憲法改正原案」を提出しようとしたのだ。

 5月18日に「改憲手続き法」が施行されたのに合わせて、自民党の石破茂政調会長が「①96条の改定、②財政健全化条項を83条に追加」案の2点に絞り提出する意向を表明した。

 しかし「自民党新憲法草案」の見直し作業中の党憲法改正推進本部から、「一括提案が望ましい」と慎重論が出て立ち消えになった。

 しかし、たとえ部分改定にせよ、まず国会の俎上に乗せようとしたのは要注意だ。国会が「改正案」を発議するには、「各議院の総議員の3分に2以上」の賛成が必要だが、「改憲手続法」によって、「改正案」の「原案」は、衆院100人以上、参院50人以上の賛成で提出することはできる。

これが両院の「憲法審査会」にかけられる。「改正案」として決められなくとも、改憲の立派なウォーミングアップになる。

 もう一つ要注意は「96条」と「83条」を入り口としたこと。「83条」は「財政処理の基本原則」だが、財政赤字が重大問題となっているので、「健全化」を国の義務として付記するという。

 本命の9条改憲の前に口当たりのいいところから慣らしていく方法だ。

 改憲の慣らし運転は、あの手この手で始められている。

  憲法ウオッチ 73     9条1項違反の「動的抑止力」
                                         
『週刊新社会』 2010年12月21日号

 『防衛大綱の概要』が報じられた。「基盤的防衛力」から「動的防衛力」への転換が基調である。

 ところで首相の諮問機関である「安保・防衛懇報告」(8月)でも民主党の「大綱への最終提言」(11月)でも、「動的抑止力への転換」と表現されている。

 つまり「抑止力」を「防衛力」というイチジクの葉でとりあえず隠したわけだ。「抑止力」という表現は自民党時代も政府の公的文書には使われてこなかった。9条違反だからである。

 9条1項には「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とある。

 「行使」ではない「威嚇」とは、反撃力の強さをみせつけて相手に攻撃を思いとどまらせることであり、「抑止力」とは「威嚇」なのだ。

 挑発的な軍事演習も「威嚇」効果大だ。鳩山前首相が沖縄米軍の「抑止力」を「学んだ」と口にして以来、いつのまにか自衛隊まで「抑止力」と位置づけられ、「9条違反」との批判をさけるため化粧しながらだが、「大綱」の基調にまで持ち込まれたのである。

  憲法ウオッチ 72     自民憲法改正推進本部「論点整理」を発表         
                                         
『週刊新社会』 2010年3月23日号

 自民党の憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)は3月4日、憲法改正の「論点整理」を発表した。

 05年10月の「自民党新憲法草案」と比べ、いっそう反動的な内容だ。
 国民投票法が施行される5月までに改正案の取りまとめを目指す。「総論」では「憲法改正要件を規定する96条の改正から、憲法改正の行動を起こす」(発議のハードルを下げる)、「国旗・国歌の規定を置く」ことの検討。

 「各論」では「象徴天皇制を維持した上で、天皇が元首であることを明記するか」、「集団的自衛権と国家の同盟関係のあり方を再検討」などが挙げられている。

 「野党」として「戦闘的」姿勢を打ち出したが、「兵役義務」の検討はまずいと思ったのか、同日に大島理森幹事長が「わが党が徴兵制を検討することはない」と発表した。

 「一院制」などは参院自民党にも反発が強く、今回も参院側の不満は強いだろう。だから「改正案」が成文化されても、それ自体より、野党として民主党内改憲推進派を突き上げる意味が大きい。

 一方で、次の政界再編の中から既成「二大政党」に飽き足りぬ尖鋭な「第三極」が登場しないとも限らない。そして、護憲の「第三極」をすりつぶし、国会議員定数削減をしながら改憲への外堀が埋められていく。

憲法ウオッチ 71     自民が「第二次案」策定へ          『週刊新社会』 2010年2月2日号

 自民党は今年に入って「新憲法草案」(第二次草案)を年内に作成することになった。

 第一次草案は05年12月にすでに発表していたが、5月の改憲手続法(国民投票法)施行を念頭に、再び改憲論議を巻き起こそうという狙いである。

 新聞報道によれば、「主要課題」として「地方自治、安全保障二院制のありかた」があげられている。

 第一次草案と比べ、「地方自治」とあわせ「国の役割の規定」(安保・外交、徴税、治安など)が討議され、安全保障では「集団的自衛権」のより明確な明文規定(第一次案では婉曲な表現にとどまっていた)を提案しそうである。

 また新たな項目としては、第一次案では参院自民党の反発で避けた「二院制」の見直し、つまり参議院の権限・機能縮小が検討されるだろう。

 とは言え、自民党の改憲論議自体ではあまり意味があるとは考えられない。自民党がそのままで政権に返り咲くかどうかは疑わしい。

 むしろ改憲勢力は民主党も含めた政界再編で再結集されるであろう。その意味では、昨年末と今年初の鳩山首相発言のほうが重大だ。

 「安倍首相が大上段から憲法改正を唱えた瞬間に議論がストップした。党のなかでしっかり議論いただきたい。そこでまとめる」と民主党の意思統一をはかりつつ、「超党派で議論することが非常に大事」と、憲法審査会の始動も示唆した。

 また「必ずしも9条ということではなく、地方と国の関係を大逆転させたい」とも述べた。

 この点では自民党の「地方自治」「二院制」という切り口と一致する。自民党の「先走り」で政権与党の改憲論議を誘発する。そんな構図がみえてくる。

憲法ウオッチ 70     小沢氏の内閣法制局つぶし        『週刊新社会』 2009年10月27日号

 民主党小沢一郎幹事長は、10月7日記者会見で「国会法」改正で官僚答弁を禁止するにともない、内閣法制局長官の答弁も禁止すると公言した。

 「憲法解釈は政治家が判断すべきで、役人が行うものではない」との理由だ。小沢氏と内閣法制局は宿敵の間柄である。

 自民党幹事長時代、国連協力法案をめぐり、国連軍への自衛隊参加は「その目的」任務が武力行使を伴うものであれば、憲法上許されない」 (前年9月)と法制局長官が答弁。怒った小沢氏は法制局長官の罷免を求めた。

 その後自民党を離党したが、今度は自由党党首として内閣法制局廃止法案を提出したこともある。

 近年では『世界』07年11月号に小沢(当時代表)論文がある。
 「国連の活動に積極的に参加することは、たとえそれが結果的に武力の行使を含むものであっても、何ら憲法に抵触しない、むしろ憲法の理念に合致する」と強弁。

 アフガン、イラクへの後方支援を合憲とするのに、国連軍参加を「違憲」とする法制局答弁は「訥弁」と激しく攻撃した。

 昨年10月に、民主党代表として記者会見した際には、内閣法制局は「いらない」と言い放った。法制局もなし崩し改憲を根拠付けてきた罪は免れないが、「集団的自衛権の行使は許されない」と最後の歯止めをかけてきたのも事実である。

 都度「政治家」が9条解釈をするのでは、二転三転し、憲法の権威がいっそう低下することはまちがいない。

 執念深い小沢氏は、民主党政権で「国連軍参加合憲」か確定させる気であろう。氏は今臨時国会で「国会法改正案」を提出する意向だ。

憲法ウオッチ 69     改正より完全実施へ        『週刊新社会』 2009年9月15日号

 『毎日新聞』の衆院選当選者アンケートの項目に「憲法改正の是非」がある。

 結果は全党では「賛成68%、反対18%、無回答14%」(前回05年当選者はそれぞれ84%、8%、9%)。民主党をとれば「賛成60%、反対21%、無回答19%だ。9条改正に限れば民主は「賛成20%、反対62%」と改憲論者は大きく減る。

 これだけを見ると、民主党政権で護憲派にとって安倍政権時代よりは一安心となりがちだ。しかし今切実なのは9条、25条をはじめ憲法の未実施状態を点検することであって、9条以外のどの条項であれ「改正」しなければ困るものは何一つない。

 そしていったん「改正」論議に踏み込んでしまえば、一番「違憲の現実」と「憲法」が対立する9条をさておくことなどできない。

 来年5月18日以降は、改憲手続法凍結が解除され、憲法審査会の実質的始動が迫られる。

 大量に当選した民主党当選者の若さからくるのか、無邪気な「憲法見直し」論はかえって怖い。共産党や社民党が憲法審査会始動に強く反対するのは当然だ。

憲法ウオッチ 68     改憲に政権交代織り込み済み        『週刊新社会』 2009年8月18日号

 総選挙では憲法は表向きは争点になっていない。しかし最大の改憲勢力である大企業は、民主党政権も視野に入れつつ、からめてから民主党を揺さぶっている。

 その一例が8月4日に政府の「安保防衛懇」(座長・勝俣恒久東京電力会長)の「報告書」である。

 「報告書」は米国の軍事的関与の縮小という国際環境の下で、日本の「協働・協力」を強めねばならないという。そのため、「敵基地攻撃能力」の「装備体系」の検討、米国向けミサイル迎撃と米艦船防護を可能にする「集団的自衛権解釈の見直し」を求めている。

 それ自体は与党への注文だが、問題は政権党間近の民主党に与える作用だ。鳩山代表は4日の記者会見では「報告書」について「政権をとれば見直す」と述べたが批判には慎重だ。

 他方、自民党は公明党への配慮からマニフェストから「集団的自衛権見直し」の表現を削った。「個別的自衛権か集団的自衛権かの議論には拘泥しない」と、ある意味では自民党より先を行く態度を明言する民主党も、改憲勢力にとって与しやすいはず。

 鳩山代表も小沢代行も、内閣法制局の見解(集団的自衛権は保持するが行使できない)を忌避していることは周知の事実である。

憲法ウオッチ 67     言葉少なに改憲準備               『週刊新社会』 2009年8月11日号

 自民党マニフェストは、「憲法審査会の早期始動」と「早期の憲法改正」を最後に掲げた。安倍首相時代の選挙公約と比べると後ろにおかれている。

 しかし「米国に向かうミサイルの迎撃」や「米艦船の防護」を可能にする「安全保障上の手当て」や、自衛隊の海外恒久派兵法である「国際協力基本法制定」などを打ち出し、民主党を煽っている。

 民主党は、07年参院選マニフェストと同文で、最後に「自由闊達な憲法論議」を掲げ、9条見直しも含む05年の「『憲法提言』をもとに」、改憲を「慎重かつ積極的に検討」するとした。

 民主党はマニフェストの「各論詳細」として「政策集」を別途用意し、社民党が反発する公約はそこに忍び込ませた。そこには「海賊対策」で「自衛隊派遣も認める」とか、「自衛権は個別的・集.団的といった概念上の議論に拘泥せず」など重大な内容が明記されている。

 両党とも言葉少なだが、着実に憲法9条破壊を大きく進めようとしている。既成事実と憲法の乖離は極限に至るなかで、両党とも国会議員定数の大幅削減を競って公約した。改憲は間違いなく不気味に近づいてきている。

憲法ウオッチ 63     小沢発言のねらい               『週刊新社会』 2009年3月10日号

 小沢一郎民主党代表の発言が波紋をひろげている。最初(2月24日は「在日米軍は第7艦隊で十分」で「あとは日本が極東での役割を担っていく」と述べた。

 2回目(25日)は「グローバル戦略を米国と役割分担」と言いつつも「日本の防衛は自分のことなんだから果たしていく」とし、そして3回目(27旦は「他国の有事に参加することはあり得ない」と「日本の防衛」に比重を移した。

 最初の発言は明らかに集団的自衛権を米軍と対等ないしそれ以上の軍事力で行使することだから、自民党内も内心共鳴する者だけでなく行きすぎと憂慮する者もいる。

 たとえ修正しても空軍・陸軍で米軍に代わる「防衛力」を保持するというのは大変なことで、自民党有力者も「憲法を変えなければできない」と指摘する。

 保守の改憲慎重派には「米軍のプレゼンスがあるから憲法は無理に変えなくともよい」という者も多い。ましてや、共産党や社民党が強く反発するのは当然だ。

 改憲の道筋は自分の手でという信念の小沢代表が口走ってしまった「失言」なのか、権力奪取射程内と見定め、党内に憲法論議の覚悟をそろそろ求めようとしたのか分からない。

 鳩山由紀夫幹事長は総選挙までに安保政策をまとめるよう、党の外務防衛部門に指示したが、当該部門には民主党の改憲派が集結している。要注意だ。

憲法ウオッチ 62     搦め手からの改憲論              『週刊新社会』 2009年2月3日号

 自民党は1月21日に、国会議員定数削減など「国会改革」案の議論を始めた。責任者の武部勤氏は、改憲をともなう二院制の見直しも検討するとした。

 すでに1月16日には自民党有志が「衆参両院を統合し、一院制の新国民議会を創設する議員連盟」総会が開催され、この議員総会には小泉元首相が「一院制を選挙公約にせよ」と発破をかけていた。

 議連の江藤征士郎元防衛庁長官は、両院の合併、定数500、大選挙区制を示している。実は参議院の扱いは改憲議論と一体で、ここ数年来各方面で議論となっていた。

 小沢一郎氏も参議院を衆議院の任命にする改憲案の持ち主である。しかし参院の反発と安倍内閣の敗退で、こうした議論は一時水面下に隠れていた。それがまた浮上してきたのだ。

 当初は、ねじれ国会の弊害を理由にした参院の見直し論だったが、与党のご都合主義が見え透いているので、マスメディアも冷たかった。しかし、消費税増税によって、国民負担を求める以上、国会議員も「血を流せ」と、麻生首相が「国会改革」を提唱し、公明党まで国会議員定数削減を言い出すなど、環境は変わってきた。

 加えて恐慌が深刻化し、危機突破のための国会の機能化が「世論」として醸成され、憲法4章「国会」の改訂論から改憲論が再浮上しつつある。

憲法ウオッチ 61     道州制は改憲必至               『週刊新社会』 2008年11月9日号

 各種「道州制」提言は改憲に言及している。直近では自民党「道州制に関ずる第3次報告」(08年7月)と、全国知事道州制特別委員会「分権型社会における広域自治体のあり方」(06・6)である。日本経団連の「提言」(08・11)にも、改憲を必要とする重大な構想が含まれている。

 改憲勢力は9条改憲正面突破だけでなく、道州制議論の搦め手から改憲議論を推進しようとする。幾つか例示しよう。

 第1に自民党も民主党もその憲法提言では「広域地方自治体」や「国と地方の役割分担と関係」を憲法に明記する。国の役割は、「安保・防衛、危機管理、原子力エネルギー」などとし、既に武力攻撃事態法などで定めた自治体の戦争協力強制を憲法上も根拠付け、自治筐民の抵抗の大きい原発問題などは国の専管事項として口を出させないようにする。

 第2に、道州制は「自治体経営」と「独立採算」を旨とするから、福祉などで住民負担は必至となる。そこで自治体の「負担を公正に分任する義務」(「自民党新憲法草案」)が明記される。

 第3に、日本経団連は「各道州の住民の意見を国政に反映させる観点から、参議院議員の一定数は、原則として各道州から同数を選出することが考えられる」という(日本経団連提言11・18)。これも改憲が必要となる。道州制は参議院の実質的な廃止論と連動する。

憲法ウオッチ 60     自・民「対決路線」の中身           『週刊新社会』 2008年11月4日号

 新テロ特措法案延長に実質協力の民主党が、「対決路線」に転換するやに報じられた。 確かに10月23日の参院外交防衛委員会は民主党の追及で審議は幾度も中断した。

 ところが、その追及たるやパンドラの箱をこじあけるようなものだ。外相が、アフガンにおける米軍の作戦は「国際法上は武力行使に当たらない」と答弁したのに対し、民主党議員は「それなら自衛隊を派遣できるではないか」と追及。外相が「憲法解釈との関係を含め相当慎重な検討が必要」と答弁しても納得せず審議ストップ。

 世間は、民主党の方が自衛隊派遣に積極的と受け止めるだろう。 実際そう思わざるを得ない審議がこのところ連続している。

 10月17日の衆院テロ特委員会では、民主党が「海賊対策に自衛隊を出せ」と要求。麻生首相が「ものすごくいい提案だ」と応じた。

 極め付きば20日の衆院テロ特委員会での民主党政調会長・直嶋議員の発言だ。直嶋議員は「国連決議があれば(自衛隊の武力行使は)可能」、「政権を担当すれば……状況によって憲法解釈を変えることはある」と明言した。

 政府・自民党すら武力行使の可能性ある派遣に慎重なのに、「国際法上武力行使でない」ならば派遣可能と誘導訊問し、さらに憲法解釈自体も変えると言う。 この「対決」はどこへ向かうのだろうか。

憲法ウオッチ 59     宇宙基本法具体化の動き           『週刊新社会』 2008年6月10日号

 自民党道州制推進本部が「国会議員の数の大幅削減」と参院の比例代表制度廃止を示したと思ったら、今度は5月28日に、伊吹文明自民党幹事長が「役人に無駄をやめさせるには政治家が身を切らなければならない。衆院は300小選挙区だけにして比例はやめた方がいい」と党内会議で発言。比例代表が7割を占める公明党が怒ったという。

 先を見据えてだろうが、この種の放言が続くのは改憲論議の呼び水で要注意だ。

 宇宙からの9条改憲=「宇宙基本法」の具体化促進をめざす超党派の議員連盟が発足する。

 自民党・河村建夫、民主党・野田佳彦の各衆院議員らが呼びかけている。内閣府への宇宙局を新設など迅速に推進させるのが直接の目的という。

 軍需関連企業が、宇宙基本法を「従来の縦割り行政が一本化され、基礎研究から産業化まで総合的に取り組める」(日本航空宇宙工業会前会長・伊藤源嗣IHI相談役)と歓迎した意を受けてであろう。

 23日には「自衛隊恒久派兵法」与党プロジェクトチームの初会合が開かれ、公明党はなお慎重ながら今国会中に法案骨格をまとめるとした。

 一方、前原誠司副代表ら民主党の有志は「船舶検査」なども含む「恒久派兵法」試案をまとめ、23日の「新世代の安全保障若手議員の会」に示した。国連決議なしでも派兵可能というのが、小沢意見との違いだ。

憲法ウオッチ 58     宇宙基本法具体化の動き           『週刊新社会』 2008年6月3日号

 国会での「対決」が一段落すると、永田町周辺で憲法がらみの政治が再度動き出す。

 本紙前号で一院制をめざす自民党などの動きと、道州制における自治体議員大幅削減の連動を指摘した。その後、自民党道州制推進本部「第3次中間報告素案」策定の議論で、「報告」に「国会議員の数の大幅削減」を明記する方針を固めたとのこと。

 また参院の選挙制度についても、全国比例代表制度を廃止し、道州ごとを選挙区とする考えを「報告」に示すという。現在の衆院ブロック比例選挙区のようなものと思われる。

 20日には、衆院笹川尭(自民)、参院西岡武夫(民主)の両議院運営委員長が協議し、翌週中に両院合同代表者会議を開き、自民、民主両党に対し、休止中の憲法審査会の規定づくりを急ぐよう要請することを確認した 

 5月21日には「宇宙基本法案」が、自民・公明・民主の賛成で参院で可決・成立した。『朝日』なども「国のありようが問われる重大な問題」に民主が同調したことを批判した。

 『読売』(5月22日)によれば小沢一郎民主党代表らが暫定税率での「与野党対立に関心を集中させ」ている隙に「実務主導の与野党協議」を進めたという。

 そして23日、公明党が慎重で中断していた自衛隊恒久派兵法与党プロジェクトチームの初会合が開かれ、今国会中に法案骨格をまとめることで合意した。 とにかく動きは早い。

憲法ウオッチ 57     あの手この手の改悪論議          『週刊新社会』 2008年5月27日号

 5月16日に一院制を目指す自民党の議員連盟(代表世話人=江藤征士郎衆院議員)が発足した。48人が出席し、顧問に森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三各氏が就任した。

 一院制議論が簡単に進むわけではない。 「ねじれ国会」議論に便乗して出発したが、参院側からは反発も強い。

 しかし議員個人や参院の保身のレベルをこえて、一院制は「新憲法」制定の重要テーマである。04年11月にまとめられた「自民党憲法改正草案大綱」には、参院の権限縮小と直接選挙の廃止が盛り込まれていた。しかし反発があり、05年10月に公表された「自民党新憲法草案」では削除された。9条や96条など緊急事案を改悪した後で着手するのだろう。

 実は小沢一郎民主党代表も一院制論者である。彼は『文芸春秋』(99年9月号)で、「参議院議員を選挙によらない名誉職的なものにして、……大所高所からご審議願うという制度に変えた方がよい」とし、第46条を「参議院議員は衆議院の指名により天皇が任命する。その任期は終身とする」と提唱。

 からめ手からの条件つくりも要注意だ。道州制にむけた自治体議員の大幅削減の議論で必ず浮上するのは、「国会議員も血を流せ」といつ煽動である。4月24日、自民党国家戦略本部は、衆院定数を200、参院定数を50に削減する案を発表(10~15年後を目途)した。福祉年金財源問題も、公務員や議員削減に誘導されている。

憲法ウオッチ 56     垣根を越える改憲の動き           『週刊新社会』 2008年5月6日号

「政党の垣根を越えて連携し、我が国の安全保障・危機管理体制を確立する」ことを目的とする「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」なる団体(会員110人)が蠢動(しゅんどう)している。

 4月23日に3年ぶりに総会を開き、自民、公明、民主の議員が参加した。共同代表は自民党の中谷元・元防衛庁長官、民主党の前原誠司前代表、公明党の上田勇広報委員長だ。

 総会では中谷元氏が「いずれの政党でいかなる政権ができようとも、ここで考えたことを実行していく共通の基盤をつくりたい」、前原誠司氏が「骨太の議論は党利党略を超えて、国会議員の責務として議論しなくてはいけない」、「(派兵恒久法は)法案の骨子、中身まで意識を共有したい」と、それぞれ代表あいさつでエールを交換した。

 そして秋までに「恒久法」制定への提言をまとめることを確認した。
 同じ日に自民党の「恒久法部会」責任者の山崎拓氏が、「今国会会期末までに法案要綱をまとめ、夏休み中に法案化し、秋の臨時国会で処理」と語った。

 25日には鳩山由紀夫民主党幹事長が、「自民党政権では憲法論議は不可能。民主党政権で論議を進める環境をつくりたい」と記者会見した。

 最近の民主党の動向は要注意だ。

憲法ウオッチ 55     道州制は地方自治の圧殺           『週刊新社会』 2008年4月1日号

 3月13日に自民党の道州制推進本部総会が、第3次中間報告原案を提示した。①都道府県を廃止し8~13の道州にする、②道州の下の基礎自治体は現在の1800市町村から700~1000に統合する、③国の仕事と財源の道州への移譲、⑤道州の首長は「直接公選制が望ましい」。道州議会の定員は40~130人程度、などとしている。

 自民党の「新憲法草案」で9条に次いで抜本的な改悪が示されているのは「第八章 地方自治」である。そこでは、民主主義の学校である地方自治機能を狭め、 「自立」や自治体の「役割の提供」の「負担を公正に分任する義務」を定め、全国あまねく等しい行政サービスを提供すべき国家の責任を免じる道を開いている。今回の報道原案はその具体化である。

 憲法改悪は戦争をできる国家を主眼としているが、地方自治の改悪もそれと無関係ではない。民主主義が切り縮められるからである。基礎自治体の半減と都道府県議員の全廃で、自治体議員は現在の4割以下になるだろう。

 道州首長も「直接公選制」は「望ましい」のにすぎない。13日の総会では、地方議員削減を納得させるためには「国会議員削減」の打ち出すべきだとの意見が出たという。小沢民主党代表の念願である参院廃止も含め、改憲は民衆の政治参加を針の穴程に狭めるシステムつくりなのだ。

憲法ウオッチ 54     超党派で新憲法制定議員同盟        『週刊新社会』 2008年3月16日号

 新憲法制定議員同盟総会が3月4日に開かれた。出席は自民、民主、公明、国民新から44人。自民党から中曽根康弘会長、安倍晋三前首相、町村信孝官房長官、中川秀直元幹事長、山崎拓氏ら。民主党から田名部匡省、渡辺秀央両参議院議員ら、国民新党から綿貫民輔代表らが参加。

 中曽根会長は憲法改正は「超党派で最大公約数を求めながら国家像を決めていく大事業だ」とあいさつ。町村官房長官は「内閣を代表して喜んで参加した」、民主の田名部議員は「改憲はここ数年で決着すると決めてやらないといけない」と発言した。

 従来民主からは役員は出ていなかったが、今回顧問に鳩山由紀夫、副会長に前原誠司、田名部、渡辺の各氏が新たに就任レた。国民新党は亀井静香氏が顧問に、自民党四役は全員、同盟の役員についた。

 今後の活動としては、①両院の憲法審査会始動を求める決議への国会議員の賛同書名を拡大する、②全国各地での組織化を進め5月1日に「新憲法制定推進大会」を開催する、などを決めた。

 上記賛同議員署名は、3月4日現在353人(自民282、公明35、民主26、その他10)。議員同盟所属の民主党議員は昨年11月には4人だったが、14人へと増えた。

 なお、顧問になった鳩山由紀夫氏は、4日に記者に「予算審議で対立している状況」で総会には欠席したが「今国会で憲法審査会が動き出す可能性もある」と語った。

 イージス艦事故問題で公明党が消極的になり、2月に予定された「自衛隊海外派兵恒久法」制定の与党プロジェクトチームの発足は3月以降に延期した。

 これもいつ浮上するか予断を許さない。どのような政界再編があろうと憲法だけは殺すという仕掛けが、確実につくられている。

憲法ウオッチ 53     現実味が出た「恒久法」            『週刊新社会』 2008年2月26日号

 「恒久法」について福田首相は1月18日の施政方針演説で「『一般法』の検討を進めます」と表明した。衆院各党代表質問で民主党の鳩山幹事長は「自衛隊派遣には原理原則が必要だ」とただし、福田首相は「憲法の範囲内での活動を前提に検討する。野党とも十分協議したい」と応じた。

 22日の参院代表質問で自民党の尾辻議員会長は「どのような国をつくるか」とただした。福田首相は「国のありようを定めるのは憲法。すべての政党の参加で幅広い合意を求め、真摯な議論を期待する」と応じた。

 このように、 「ガソリン」では激突する自民党と民主党も、 「恒久法」の必要性では足並みそろえた。今のところは民主党は憲法審査会の始動に協力していないが、首相は25日の参院本会議で審査会について「改憲内容などについて、全政党で幅広い合意を求め真剣な議論を期待する」と答弁した。

 こうした永田町の空気のなかで、民主党より「恒久法」には消極的であった公明党も踏み出した。22日に公明党外交安保調萎と内閣部会が合同で「恒久法」についての本格的な議論を開始した。党内合意を得たところで来月中に自民党と与党一プロジェクトチームを設置して法案化作業に入るという。

 「ガソリン国会」の陰で着々と地ならしが進んでおり、総選挙の結果次第で「政界」がどのような組み合わせになっても改憲の準備おこたりないのである。

憲法ウオッチ 52     「恒久法」テコに改憲議論が再燃       『週刊新社会』 2008年2月5日号

 2月13日に自民党が、自衛隊海外派兵恒久法制定のため、 「国際平和協力の一般法に関する合同部会」を発足させた。座長は山崎拓氏。27日には公明党と与党プロジェクトチーム設置する予定だ。

 自民党は13日に民主党に協議を呼びかけたが、民主党は「与党側の考えが出ていない段階では応じられない」(鉢呂吉雄氏)と拒否した。

 さて、自民党のシフトには本気がうかがえる。まず座長に、「ハト派」と言われる山崎拓氏をすえた。彼が「ハト」とは、「ハト」も迷惑だろうがそれはともかく、山崎座長は「従来の憲法解釈を踏襲することを前提に議論する。今国会で成案をえて審議を行うところまで進めたい」と明言した。集団的自衛権行使容認を明確にせよとの意見をおさえ、公明党や民主党の一部をまきこむスタンスだ。

 むしろ「原理原則」を掲げる小沢代表の方が、 「国連」を錦の御旗に従来の政府憲法解釈の変更を迫るかもしれない。少なくとも継統審議扱いになっている、民主党のデロ特描法対案は、解釈変更が論理的に前提になっている。

 山崎氏は最近、民主や社民の議員も引き連れて訪韓した。民主内にも手を突っ込んで再編のしかけに余念がない。公明党も創価学会からの慎重論を抑え、頭越しに自・民連携が先行せぬよう、協力するだろう。恒久法は現実味を帯びてきた。

憲法ウオッチ 51     政府が「派兵恒久法」に着手         『週刊新社会』 2008年1月22日号

 8日に政府が「派兵恒久法」制定の準備に入ることを決めた。当面与党でプロジェクトを設置して法案化検討作業に入るが、町村官房長官はさっそく8日の参院委員会で民主党に協議を呼びかけた。直接の狙いは、テロ特措法が成立しても1年時限立法のためだが、これが自衛隊海外派兵の従来のレベルから質的に飛躍させ既成事実化し、2010年以降の9条明文改憲の最大の梃子となるのはいうまでもない。

 最大の焦点は、「武器使用基準」と「停戦合意の成立」という従来政府も規制されていた大枠をどう打破するかにある。実は民主党がこの間小出しにしてきた案と、自民党が06年にまとめた「石破私案」は大差ない。むしろ民主案の方が派遣地域を拡大でき、かつ武力行使基準をより緩和し、「国連決議」前提なら「海上阻止活動への参加」すら可能とするものである。なお「国連決議」の有無が対立点として残っているが、これは「政争の具」にすぎない。

 一方与党・公明党の方が恒久法制定には慎重だ。「超党派」である改憲勢力は、「連立再編」もちらつかせ公明党に譲歩を迫るだろう。政府が公明党や内閣法制局などの躊躇を振り切り、一歩踏み出せたのも民主党の呼水があったからといっても過言ではない。

 政府は遅くとも総選挙後の国会には法案を提出したいだろう。そうすると問題は年内には必至の解散総選挙でこの重大問題がどうあつかわれるかだ。小沢代表は「有権者に分かりにくい筋ものは選挙公約の重点にはせず、政治のプロにまかせてもらう。金目のものを争点にする」というスタンスだから、争点にしないだろう。

 せめて護憲を掲げる全政党・勢力が、海外派兵恒久法反対の一点で政策連合を組み選挙で反対の世論を喚起しなければならない。

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