今週の新社会

核兵器ゼロへ 「禁止条約」の批准を
世界の市民が声を上げる

2021/08/03
=核兵器禁止条約が発効した1月22日、1200本のろうそくで原爆ドーム前に浮かび上がった「核のない未来を 核兵器禁止条約」の文字

 核兵器の開発から使用を初めて違法とした核兵器禁止条約が1月発効、批准したのは7月12 日現在55カ国・地域。条約をけん引すべき唯一の戦争被爆国である日本政府は、米国の「核の傘」にすがって背を向ける。一方、核保有国の20年度の核兵器関連支出(推定)は米国の約374億ドル(約4兆1千億円)を筆頭に合計726億ドル(約7兆9千億円)。日本はじめ世界の市民は、この現実を変えようと動き出している。

 コロナ禍で命と健康が脅かされている時、核保有9カ国の核兵器関連支出726億ドルを貧困解消に使えば世界は平和と安全に向かう。日本の世論は6割~7割が核兵器禁止条約を批准すべきとし、7月20日現在、全国の自治体の593議会が条約批准を求める意見書を議決している。

 カナダのサイモンズ財団が07年に英・米・仏・独・伊・イスラエルの市民を対象に行った調査、核兵器が世界を安全にしているかに「そう思う」は一桁~20%足らず、「危険にしている」が70%~90%を超えている。

 核兵器廃絶国際キャンペーン「ICAN」が5月発表した米国の核兵器を配備するEU4カ国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ)の世論調査は、条約に署名すべきが62%~70%、自国に配備されている核兵器が必要かとの問いに49%~67%が必要ないと答えた。

 ヒロシマ・ナガサキの原爆の日を前に日弁連は7月19日、オンラインで「核兵器禁止条約について早期の署名・批准を求めるシンポジウム」を開いた。

 田中真紀子元外相は報告者として、「核兵器禁止条約は関係者が地を這うような努力した結果」とし、条約に背を向ける日本政府を批判、「オリンピック直後には総選挙がある。お灸をすえるのではなく、シャッフル、入れ替える必要がある」と政権交代を訴えた。

 世界の8千を超える都市が加盟する核兵器廃絶をめざす国際NGO「平和首長会議」(会長= 松井一実広島市長)は7月16日、「持続可能な世界に向けた平和的な変革のためのビジョン」を発表した。

 「ビジョン」は、都市とその市民が標的となり、使用の影響が地球規模となる核兵器は、市民の安心・安全な生活を脅かす最大の障害であるため、国連・各国政府、とりわけ核保有国及びその同盟国に核兵器廃絶に向けた行動を要請することにより、為政者の政策転換を促し、核兵器のない世界の実現や安全で活力のある都市の実現、平和文化の振興を目標として掲げ、21年度から5年間の「平和首長会議行動計画」を決めた。