今週の新社会

原発回帰ストップを
事故被害者を尻目に
岸田政権は暴走 規制委員会は政府と一体化
福島事故から12年

2023/03/08
 「さようなら原発1千万人アクション」のデモ行進=19年9月

   東京電力福島第一原発事故(2011年3月11日)直後に政府が出した「原子力緊急事態宣言」は、解除の見通しも立たない。ドイツなどは脱原発にかじを切ったが、岸田政権は原発回帰。福島の県外避難者数は22年11月時点で2万1千人余。裁判闘争を続け、今なお苦しむ被害者を尻目に政権は事故がなかったかのように動く。

    原子力規制委員会は2月13日、60年超の原発稼働に道を開いた。原発回帰に向け、科学的な議論の場に政府方針が持ち込まれた。反対意見を切り捨てた異例の多数決は、2月10日閣議決定の「GX実現に向けた基本方針」の圧力によるものだ。

    基本方針には、「廃炉決定した原発の敷地内で次世代革新炉を建て替える」と、60年超の老朽原発も、「一定の停止期聞に限り、追加的な延長を認める」と明示された。

    かつて、「原子力安全・保安院」は原発を規制する立場でありながら、原発推進の経済産業省の下に置かれていた。その反省として福島事故後、環境省外局の独立機関として原子力規制委員会が設置された。

    規制委の目的は、「原子力規制体系を再構築し、国民の信頼を回復する」「原子力に対する確かな規制を通じて人と環境を守る」こと。だからこそ、規制委で地震や津波に関する審査を担う元日本地質学会会長の石渡明委員は13日の決定に断固として反対したのだ。

    岸田文雄首相は原発の安全確保より、5月の広島G7の議長国として脱炭素経済をぶち上げるためGX関連法案を優先させた。

    規制委の山中伸介委員長の「法案のデッドラインがあるので仕方がない」との釈明は、規制委が再び経産省と一体化したことを自ら表明するものだ。

    政府は、漁業者との約束を反故にし、放射能汚染水を「処理水」と言い繕い、今春ないし夏の海洋投棄を既成事実化している。

   「二酸化炭素排出削減」が原発回帰の隠れ蓑に過ぎないことは、かつて世界一のシェアを誇った太陽光発電パネルの生産が見る影もなくなっていることが証明している。 

  二度と原発事故を起こさせないためには、全国の市民の闘いで「原発回帰にストップ」をかけることだ。