イチオシ

75歳超医療費 2割阻止を

2020/12/15
受診抑制で重症化

医療費増につながる
   
■厚生労働省が示した5つの選択肢
所得上位 年金収入の目安 2割負担対象者
単身 夫婦2人
20% 240万円 360万円 約200万人
25% 220万円 340万円 約285万人
30% 200万円 320万円 約370万人
38% 170万円 290万円 約520万人
44% 155万円 290万円 約605万人


 政府は、2022年度から75歳以上の医療費の窓口負担の引上げを検討している。現在75歳以上の高齢者は、窓口で医療費の1割を負担している(但し、現役並みの所得〈単身世帯の場合、年収383万円以上〉の場合は3割負担)。

 安倍政権は19年参院選後の9月、「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げ、12月の中間報告で、「75歳以上の後期高齢者の医療費自己負担の引上げ」を掲げた。今秋から、1割から2割に引き上げる対象の具体的検討(表参照)が始まっており、政府・与党内で解散・総選挙をにらみ綱引きとなっている。

 75歳以上の高齢者の医療は、後期高齢者医療制度という一般医療制度とは別の仕組みで運営されている。高齢者のみを被保険者とする独立の医療保険制度は世界には類がなく、そもそも廃止すべきものだ。後期高齢者医療制度の財政は、高齢者の医療費の自己負担金と、75歳以上の高齢者の保険料が1割、現役世代が加入する各医療保険者からの後期高齢者支援金4割、公費5割で賄われている。

 財界や健康保険組合は以前から、後期高齢者支援金の負担が重いと引下げ要望を出していた。とりわけ25年には団塊世代が75歳に達するため、早期実現を求めていた。政府も、現役世代の負担の軽減を掲げている。

 厚労省は、単身の場合で年収170万円以上の高齢者を2割負担にする方向で検討しているといわれ、高齢者の4割近くが該当する。消書税引上げ、そしてコロナ禍で生活苦に陥っている高齢者は多い。自己負担の引き上げは、受診抑制につながり、逆に重症化をもたらして医療費増につながりかねない。

 1900年代後半には、70歳以上の医療費は無料の時代もあった。高齢者医療費の窓口負担の2割への引上げは、中止すべきである。