鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

安倍・菅亡国の政治 第68回

2021/09/07
 鹿児島県種子島の沖合にある馬毛島(まげしま)はわずか8平方キロメートルほどの無人島である。十数年前、漁船にのせてもらって上陸したのは、硫黄島で実施されていた米軍艦載機のタッチ・アンド・ゴー(離着陸)訓練を、この島を買収して行う、との噂を聞いてのことだった。

 不思議なのは、沖縄の辺野古基地もそうだが、米軍の新基地が勝手に建設されることだ。青森県の西海岸にちかい旧車力村(つがる市)の自衛隊ミサイル基地そばに、米軍のミサイル防衛用レーダー「Xバンド」が設置され、米兵と警備会社の社員が常駐するようになった。

 馬毛島の自衛隊基地は、もっぱら米軍艦載機の訓練に使用される。自衛隊との共同利用として、強襲揚陸艦などの大型港湾建設の計画も明らかになった。

 島はほぼのっぺらぼうの台地で、やや高台に旧陸軍のトーチカが遺されてあった。部厚いコンクリートの廃墟から、銃眼が不気味に虚空を覗いていた。

 その後、立石建設の子会社「タストンエアポート」が買収、2011年6月、2プラス2、米国の国務長官と国防長官と日本外相と防衛大臣とで、タッチ・アンド・ゴー訓練基地に決まった。防衛省が買収したのが19年1月。

 当初の買収価格は45億円と言われていたが、加藤官房長官と菅現首相の懐刀和泉洋人とが、交渉担当の不動産会社と何回か会っているうちに160億円+αとなった。

 この小島の買収にかける資金は、そこから南下した巨大な辺野古米軍新基地建設の「建設費の流用」と書く西谷文和さん(『新聞うずみ火』21年8月号)は、こういう。「埋めても埋めても沈んで行く膨大な(辺野古の)建設費。その一部を姑息な手段で、馬毛島の環境破壊に使おうとし、さらにその決定方法が秘密になっている。これは二重三重の国民に対する裏切りである」

 アメリカ戦略のコマにすぎない自衛隊。防衛費はうなぎ上りですでに5兆円突破。米軍の中古を押し付けられて出発、いまは米軍需産業から不要な兵器を押し込まれている。安倍・菅自民政治は亡国の政治だ。