道しるべ

少数意見切捨て許さない

2025/12/03
衆院比例定数50削減 

 
自民党と日本維新の会は、連立合意に基づく衆院議員定数1割削減を巡る協議を行っている。維新が主張する比例代表50を削減すれば、中小政党ほど打撃を受け、少数意見は反映されにくくなる。

  衆院議員定数の削減は、連立協議の中で突然出てきた。 

  維新はそれまで「政治改革」の課題として企業・団体献金の禁止を主張していたが、連立協議で自民が応じないとみるや棚上げし、「身を切る改革」と称して持ち出したのが定数削減だ。 

  しかも、削減法案の臨時国会提出を「絶対条件」とし、成立をめざすとしている。つまり、議員定数削減を強く打ちだすことで企業・団体献金の禁止棚上げを隠す論点のすり替えで、政権入りを優先したのであり、姑息というしかない。 

OECDで36番目 

  維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は「国会議員の定数が多すぎる。議員定数の大幅削減を絶対やるべきだ」と主張するが、そうではない。 

  日本の国会議員定数は100万人当たり5・6人と、経済協力開発機構(OECD)加盟国38カ国中36番目。G7の中でも2番目に少なく、イギリスと比べると4分の1程度で、国民の多様な声が国会に届きにくいのが実態なのである。 

  衆院定数は465で、吉村氏は「50人ぐらい削減したい」と言う。一割超だ。定数の289は小選挙区、176が比例代表だが、維新は比例をターゲットにしており、1割削減した場合、比例代表は120台まで削られることになる。 

小選挙区制の歪み 

  小選挙区では最大得票の候補者1人しか当選できず、大政党に有利で、大量の「死票」が出る。死票に投じられた民意は、国政に反映されることはない。この小選挙区制度の歪みを是正するためにあるのが、票数に応じて議席を配分する比例代表制だ。 

  比例代表定数の削減は、選挙区制が持つ歪みをさらに拡大させ、多様な民意を切り捨てることにつながり、民主主義の後退をもたらす暴挙と言うしかない。 

党派を超え共闘を 

  議員定数削減は多くの政党から批判、疑問の声が出ており、自民党内にも公然と反対の声があがっている。衆院議員定数の削減は、高市内閣成立のために拙速、かつにわか作りの連立合意がもたらした暴走だ。 

  少数意見を切り捨てる民主主義の危機を打破するために、党派を超えた共闘は可能だ。議員定数削減反対の声を国会内外に広げ、法案提出を阻止しよう。